大判例

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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和25年(う)454号 判決

被告人仲田源英が機関長、同崎山喜光が甲板員として所論旭丸に乗組み、同船の船長(船主)中田窪哉が種子島沖合海上において、同人所有の煮干いわしと船名及び氏名不詳の者の双目糖その他の物資とを交換して同船に積込む際、被告人両名はたまたま所論事情のもとに相手方との交換物資が密輸入品であることを認識していたとしても、それをもつて、ただちに被告人両名が同船船長中田窪哉と共謀の上密輸入をしようとして、これが積込みをしたということはできない。しかも、検察官の摘示する所論証拠は勿論のこと、原審において取り調べた全証拠によるも、いまだ被告人両名が、中田窪哉と共謀の上、所論所為に及んだ事実を認めるには不十分である。それ故、被告人両名を中田窪哉の密貿易の共同正犯として律するわけにはゆかない。

果して然りとすれば、被告人両名の所為は、中田窪哉の密貿易の所為に対し、所論のように従犯関係にあるかどうかにつき按ずるに、所論摘示証拠によれば、被告人仲田源英は、旭丸の機関長として前示物資を積込んだ同船を鹿児島湾まで運転し、同崎山喜光は、同船の甲板員として同物資を同船に積込む加勢をし、いずれも、同物資が密輸品であることの認識があつたことは首肯し得られるから、一応、被告人両名の所為は、中田窪哉の所為に対し、従犯関係にあるものと思料されないでもないが、しかし、訴訟記録並びに原審において取り調べた証拠にあらわれた事実を綜合し検討すれば、元来、被告人両名は中田窪哉から鹿児島沖合における錆釣漁業のため乗船を求められたので、これを承諾したものであり、いずれも、阿久根港から乗船して種子島方面に向つたが、まず、被告人仲田源英は旭丸を運転して種子島沖合にさしかかつた頃船長中田窪哉の指示によつて停船したところ、そこに、たまたま発動機船が旭丸に横付になり、同船に荷物の積換をし、その積換終了とともに、中田窪哉の命により同船を鹿児島湾に向け返転運行したもので、その積荷に際しては何等関知していないことが認められ、また、被告人崎山喜光は種子島沖合において、前示発動機船から旭丸に荷積する際、中田窪哉の命によりその荷積の加勢をした程度のものであるいきさつが窺い得られるところである。かように、海上において、船中にある場合、突如として前示のような予期しない事情が発生した際には、結局は被告人両名のように前示方法以外にとるべき手段がないことが首肯され、他に適当な処置をとることは何人にも期待し得ないものとみるのが相当である。さすれば、前示被告人両名の所為は、ただちに、中田窪哉の密貿易の所為に対し従犯関係にあるものとして刑責を負担させることはできない。

敍上説示するところにより、検察官提出の全証拠によるも、起訴状記載の公訴事実は結局これを認めるに足りないから、原判決が被告人両名に対し無罪を宣告したのは相当である。それで原判決には何等事実の誤認はなく、論旨は採用し得ない。

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